「森林・林業白書」が求めていること

2026年9月15日
沢田 治雄

「令和7年度 森林・林業白書」が6月に発行されましたので、森林所有者、林業事業体の観点から要点をまとめてみました。

  1. 主伐後の再造林がより重視される
     白書の中心テーマは、森林資源の循環利用です。人工林が利用期を迎える中で、主伐を進めるだけでなく、伐採後に確実に植え直し、育てることが重要とされています。
    そのため、伐採収入を短期的に得るだけでなく、再造林費用を見込んだ長期的な経営計画が求められます。
  2. 林業適地への経営集中が進む
     白書では、すべての森林を同じように経営するのではなく、地形、路網条件、成長量、搬出コストなどを踏まえ、林業経営に適した森林を選び、重点的に施業する考え方が示されています。これには、個々の森林が「積極的に木材生産を行う森林」なのか、「保全を重視する森林」なのかを明確にすることが求められます。森林組合にとっては、地域内の森林情報を整理し、施業地を集約して効率的な事業地をつくる役割がさらに期待されます。
  3. 集積・集約化の必要性が高まる
    白書は、伐採、搬出、再造林、下刈りなどのコストを下げるために、森林経営管理制度や森林環境譲与税なども活用しながら、所有者の意向確認、経営委託、施業の集約化を進めることを示しています。林業事業体には、作業受託だけではなく、所有者の合意形成を進め、地域全体の森林経営を設計するコーディネーターとしての役割が期待されます。
  4. 低コスト再造林・省力化技術への対応が重要になる
     再造林の最大の課題は、造林費用と人手不足です。白書では、伐採と造林の一貫作業、コンテナ苗、エリートツリー、下刈り回数の削減、機械化、ICT活用などを重視しています。したがって、林業経営体は、低コスト造林やスマート林業に対応できる体制づくりが求められます。
  5. 木材価格・取引条件への意識が変わる
     白書では、木材利用の拡大だけでなく、再造林費用を木材価格や取引に適切に反映させる必要性を示しています。これは森林所有者や森林組合にとって重要です。安く木を売るのでは再造林費用を確保できません。木材の販売時に、搬出費、造林費、育林費まで見込んだ収支管理がより重要になります。そのための連携も必要でしょう。また、建築業者、製材工場、流通業者、消費者に対して、持続可能に生産された国産材であることを説明し、価値として認めてもらうことも求められます。
  6. 森林の多面的価値を収益化する動きが強まる
     木材生産だけでなく、森林の炭素吸収、生物多様性、水源涵養、景観、レクリエーションなどの価値も重視されています。J-クレジット、森林空間利用、「森業」などは、森林所有者や森林組合にとって新たな収益源になり得ます。特に条件不利地では、木材生産だけで採算を取るのが難しいため、森林サービス産業、企業連携、環境価値の販売などを組み合わせることが重要になります。
  7. 災害・防災面での森林管理責任も増す
     林野火災、豪雨災害、山地災害への対応も白書の重要な論点です。特に、放置林は、災害リスクや病虫害、獣害の面でも問題になりやすいため、適切な管理を行うことが地域社会からも求められます。森林所有者や森林組合には、路網整備、間伐、境界確認、危険木処理、里山管理などを通じて、地域の防災力を高める役割が期待されます。

  まとめ
   白書は、木を売る林業から、伐採・利用・再造林・環境価値の創出までを一体で考える林業経営へ移行する必要性、また、森林を持続的に経営し、次世代へ資源をつなぐ責任を求めていると言えます。そして、「令和7年度 白書」は、森林所有者や森林組合に対して、次のような対応を迫っているといえるでしょう。

  • 主伐後の再造林を前提にした経営計画を立てる
  • 林業適地を見極め、施業を集約化する
  • 低コスト造林・スマート林業を導入する
  • 再造林費用を反映した木材販売を意識する
  • 木材以外の森林価値も収益化する
  • 地域の防災・環境保全の担い手として役割を果たす

 会員の皆さまが、この白書をどのようにお読みになったか、ご報告いただければたいへんありがたいと思っています(白書は林野庁のホームページで公開されています)。