平成20年度現地研修会報告(2)

2008年12月11日
大貫 仁人

(第1日目つづき)
 ここ川上村の官庁街で、清光林業㈱の岡橋社長さんと社員の方が出迎えてくれました。社長さんの車の先導で大型バスは国道169号線をダム湖を左に見ながら吉野川上流へと向かう。白屋橋を通り過ぎ、次の橋で吉野川を渡り村道に入るが、大型バスには道幅が厳しすぎる。武木(たけぎ)の部落の入り口のカーブでベテランの運転手もお手上げとなった。ちょうどそこには、ヘリ集材の山土場があり、そこでバスはUターンすることができた。そこからは視察の現場まで、社長さん自らの運転も含めて三台の車でピストン輸送に奮闘して頂いた。武木川に沿っての急坂の村道を車で10分位登ったところから清光林業の社有林の林道に入る。最初に輸送されたグループは林道の入り口で降り、そこから徒歩で登ること20分位で視察現場に着く。林道の入り口からしばらくは吉野地域では比較的平坦な地形で林齢110年生のスギ林が続く。利用間伐も適切に行われているようで林分高35~40m、平均直径70cm位の林である。傾斜が急になる辺りからヒノキ林になる。

  • 林齢110年生のスギ林分
    林齢110年生のスギ林分
  • 説明する岡橋社長さん
    説明する岡橋社長さん
  • 大橋式丸太組工法の一例
    大橋式丸太組工法の一例

 ここが視察地、現在自力で林道の作設中の現場であった。早速、岡橋社長さんの説明がはじまる。SGECの森林認証を受けた森林の一部で、この現場は標高900m位のところ、林齢90年生のヒノキ林で茅場に植えた初代山ではあるが、風が入るのであまり良くない林分だとのこと。ここの利用間伐をするため2年前から路網開設をはじめたそうである。話題は林道開設のこと。大橋式林道作設法に心酔し28年間一筋に高密路網開設を続けていること、「壊れない、壊さない、いつでも使える林道作り」に心がけていること、路網開設で一番難しく神経を使うのが路線の選定で、大橋式を忠実に実践していること(避けなければならない地形的特色など具体的な事例を列挙しながら)、キャタピラ方式の足回りは避けホイル方式の足回りでなければならないこと、吉野林業は路網の充実によってのみ復活できること、社員としての若者確保にも高密路網が重要であること(月給制、週休2日制、全天候労働を可能とし、労働環境の整備につながるなど)、林道開設に当たっての路面処理工の実際(伐開、粗道づくり、路肩、丸太組構造物、丸太柵等)について、等々熱心な説明が続く。それに対して様々な質問が会員から投げかけられる。一つ一つ丁寧に対応して頂き、会員それぞれ得るところ大きかった模様であった。岡橋社長さんと一緒に来た道を下りながら、さらに、周りの山の施業のこと、林道開設の経済性のこと、生態系のこと、吉野林業のことなど様々な質問攻めが続いたが、また、ピストン輸送でバスまで戻り、一日目の現地視察は終了となった。予定時間どおりにその日の宿(村営「ホテル杉の湯」)に投宿し、会議室で勉強会がはじまった。
 内容は、①「奈良県森林・林業・木材産業の概要」(奈良県農林部林政課課長補佐・室垣内清明氏)、②「吉野町の概要」(吉野町町長・北岡篤氏)、③「川上村の概要」(川上村副村長・栗山忠昭氏)、④「清光林業㈱の経営概要」(主に、大橋式作業道づくりの具体的な説明)(清光林業㈱代表取締役・岡橋清元氏)、⑤「吉野林業地の概要」(吉野林業の歴史と現状)(吉野林材振興協議会常務理事・西本順蔵氏)等であり、2時間にわたる勉強会ではあったが、時間が足りない中での各講師の方々の熱演に参加者の皆さん大変喜んでいました。ありがとうございました。勉強会の後の懇親会では講師の皆さんを囲んで楽しい宴が続きました。現地研修の一日目が終わりました。

  • 勉強会の模様
    勉強会の模様
  • 熱弁をふるう岡橋社長さん
    熱弁をふるう岡橋社長さん
  • 流暢な説明をする西本氏
    流暢な説明をする西本氏

平成20年12月 会長 大貫仁人