新年のご挨拶

2013年1月19日
箕輪 光博

 新年明けまして、おめでとうございます。
 本年は巳年、皆さんの初夢は如何でしたか。私は、元日の朝方、大きなニシキヘビに呑み込まれた夢を見て目が覚めました。すると、となりに寝ていた奥方が、「私も今蛇の夢をみた」と驚いた様子でした。夫婦揃って巳年の元旦に蛇の夢を見るなんぞ、大変珍しいことなので今年は何かが起こりそうな感じを抱きました。いまさら、金運に恵まれるとはおもいませんので、当会はもちろんのこと、小生も「時勢に呑み込まれないように」気を付けたいと思います。
 さて、当会にとって、昨年は130周年目の節目に当たる年で、それを記念して、パネリストをナデシコとするシンポジウムを2回開催致しました。1回目については前回言及しましたので(機関誌『山林』の11月号、12月号に概要を記載)、ここでは2回目について簡単に感想を述べさせて頂きます。テーマは、「林業復権に向けて―なでしこの人間力とデザイン力への大いなる期待」で、基調講演は北尾邦伸氏による「産業論の再構築と林業復権」、パネリストが、山﨑靖代(林業家)、遠藤美樹(ミキコム代表)、鈴木直子(住工房なお)、田中万里子(東京農業大学)、泉桂子(都留文科大学)の諸氏でした。北尾氏は、「産業としての林業をどのようなものとして考えるか、林業の復権をどう構想するか」という観点に立って、産業論の歴史、自己の歩みを、「自省的(reflective)」に総括しつつ、環境を保全しながら産業的な営みができうる林業のすばらしさを端的に示してくれました。また、5人のパネリストの方々も、それぞれの立場、体験から、ライフスタイルや生活環境が変容する中で、森と人・都市・山村を繋ぐことの大切さを再確認すると共に、そのためには1人ひとりが林業の復権に向けて行動することが大切であることを強調されておりました。なお、第3回目は、この2月25日、「食文化で山村を元気に―女性たちの底力」と題して、三会堂ビルの9階石垣ホールで開催する予定ですのでご参加のほどよろしくお願い致します。    
 次にもうひとつお伝えしたいことは、当会の林業経営推奨行事で農林水産大臣賞を受賞した奈良県の林業家・岡橋清元氏が、昨年の第51回農林水産祭で天皇杯に輝いたことです。これは、昨年度の竹川将樹氏に続く2年連続の快挙で、当会はもちろん林業界にとって大変な朗報です。氏の経営の特徴は、厳しい林業環境の中で、吉野林業の伝統に立脚しながら大橋式路網技術を積極的に導入し、「攻めの経営」を実現しているところにあります。林業の復権はそうした試みから始まり、そして究極的には、大橋慶三郎先生の主張される「生命力のある木」の世界、「林業・路網の美」の世界の実現を通して達成されるものと推察されます。
 昨年の暮れに安倍政権が誕生して、世の中は期待感に溢れているように見えます。しかし、林業界の景気回復、森林・林業再生プランの実効性担保、国有林の再生などについては、いずれの課題もその先行きは不透明です。そのような状況の中で、当会は、職員一丸となって、北尾先生の「自省(reflection)」という判断力の原点に立ち返って4つの公益事業をバランスよく展開していく所存です。一層のご支援、ご鞭撻を頂ければ深甚です。最後に、末筆になりましたが、会員諸兄のご発展、ご健勝を祈念して、新年のご挨拶とさせて頂きます。

2013年1月 箕輪 光博