水のかたち

2007年8月8日
大貫 仁人

 先日、茨城県近代美術館で「水のかたち展」を観てきました。水は方円の器に従うのに「水のかたち」とは面白いな、どのように見せてくれるのかと興味をそそられたからです。横山大観、小野竹喬、池田遙邨、川合玉堂等60名を超える芸術家の明治から平成までの作品(絵画、彫刻、織物、映像)が企画に従って展示してありました。「水への眼差し、水への思い――水はどのように表現されてきたか」がこの企画のテーマで、水の美しさを改めて知ってもらおう、気づいてもらい、感じてもらうことを意図したものでした。水に視点を集めさせようとする展示の工夫に誘われて、水の流れ、波、瀧、雨の様々な表現や色彩の美しさ、面白さに魅せられました。数ある絵画の中で特に印象に残ったのが稗田一穂の「幻想那智」でした。煌々と照らす月明かりに浮かび出るご神体那智の滝を真ん中に、熊野の山々、熊野神社の社殿、熊野灘がともに描かれています。轟々と奔流する瀧の力強さが月の光の中で鮮やかな白線として単純化されて浮き出されています。極めて幻想的な印象を受けました。その他にも、荒海の波濤、時化・凪の実在感、渓流の透明感、春の湖畔の長閑さ、水面に映る雲や周りの景色、海水浴で波と戯れる老若男女の賑々しさなど芸術の素晴らしさを堪能しました。わざわざ足を運んだ甲斐があったと喜んでいます。
 「水」といえば、身の回り日常的なものから宇宙的なものまでいろいろあります。夕立、豪雨、台風、洪水、鉄砲水、梅雨、水資源、水道水、水不足、節水、川遊び、水の事故、液状化、断水、熱中症、氷柱、遣り水、逃げ水、蝉の小便、森と水、地下水脈、湧き水、水質浄化、間接的水輸入(農畜産物、木材)、命と水、高含水スギ、木材乾燥、機能水、人工消雨、火星の水などが浮かびますが、科学博物館での「水のかたち展」があれば是非いってみたいと思います。
 ところで、今年も天候不順で降雪も少なく水不足が心配されました。都心での初雪は平年より73日も遅い3月中旬でした。3月25日には能登半島地震が発生し、竜巻等、突風被害が目立ちました。4月は寒暖激しく、5月は爽やかな皐月とはならず、東京での6月の梅雨入りは平年より6日も遅い6月中旬、梅雨は陽性型で九州を中心とした豪雨被害、7月中旬には早くも台風4号が上陸し梅雨前線を刺激、驚いたことに中越沖地震(7月16日)が発生。台風5号が続いて上陸し、平年より12日も遅い梅雨明け(8月初旬)をもたらしました。現在は日本国中猛暑に見舞われ、水の事故や熱中症が紙面を賑やかにしています。日本列島は毎日が「水」との関わりの連続だと思われます。本年これらの地震、台風、豪雨で被災された方々に心からお見舞い申し上げます。
 大日本山林会の行事ですが、「平成19年度現地研修会」が具体的になり、『山林』8月号(裏表紙)で参加募集をしております。高知県、四国森林管理局、(株)エコアス馬路村、馬路林材加工協同組合、溝渕林業(株)、(株)とされいほくの皆様にお世話になります。講師・コーディネーターには、高知大学農学部森林科学科の川田勲教授をお願いしてあります。研修課題を「21世紀林業への挑戦―嶺北地域の林業経営と天然魚梁瀬スギを訪ねて―」としました。これまでの日本林業再生に向けた先達的な取り組みの現場で研修させて頂き、参加者の皆さんと「21世紀の日本林業について挑戦的なあり方」を考えていきたいとして課題を設定しました。是非奮ってご参加をお願いします。
 「全国林業経営推奨行事」につきましては、既に第一次審査、第二次審査を終了し、農林水産大臣賞8件、林野庁長官賞16件、大日本山林会賞8件を決定し、受賞者にお知らせしてあります。来る11月22日(木)に本会総裁・桂宮宜仁親王殿下の御台臨を仰ぎ賞状伝達・贈呈式を開催する予定です。なお、受賞者全員を第46回農林水産祭参加表彰行事に推薦してあります。

2007年8月 大貫 仁人