平成21年度現地研修会報告(5)

2010年1月25日
大貫 仁人

(2日目つづき)
 山武市での視察を終え、一路、国道409号線を南下、東金から九十九里道路に入り、更に南下して、国道128号線に入り、やや予定より早めに、勝浦市にあるホテルに到着。早速2日目の勉強会を始める。
 最初の話題提供は、林野庁関東森林管理局千葉森林管理事務所の調整官・山田真二さんから管内概要の説明があった。千葉県全域の国有林を管理。計画区は千葉北部(44ha)と千葉南部(7,711ha)で、千葉北部の国有林は主に海岸にあり潮害防備・保健保安林、千葉南部の国有林は主に山間部にあり水源涵養保安林となっていること、さらに、元清澄山林木遺伝資源保存林(君津市)、南房総暖温帯性植物群落保護林(大多喜町)、筒森自然観察教育林(大多喜町)、麻綿原風景林(大多喜町)、久留里風景林(君津市)等について説明があった。

  • 話題提供のパネラー
    話題提供のパネラー
  • 会場の様子
    会場の様子

 次いで千葉県農林水産部森林課林業振興室長の寺島嘉春さんから、千葉県の森林・林業について説明があった。先ず千葉県の特徴として、地形的特徴(細かい谷津地形と隆起による急峻な地形)、江戸時代における江戸への燃料・木材の供給地としての林業が発展した歴史、「海岸砂地造林」による海岸防災林の造成の歴史と管理の現状、近年におけるゴルフ場・宅地造成、砂利採取、産業廃棄物処分場建設による大規模な林地開発の現状(この20年間で8,100haの森林が消滅)、第54回全国植樹祭(平成15年)を契機に制定・施行された全国初めての里山条例による活動等について説明があった。更に、千葉県の森林の概況(林野率32%、民有林率94%、所有規模の零細さ(5ha未満88%)、人工林率30%)や植生の特徴(ヤマモモ、カゴノキ、バクチノキ、リンボク、マルバチシャノキ、オガタマノキなどの北限樹種も自生する雑木林、全国最大規模のマテバシイ純林等)、千葉県の森林施策(森林資源の循環利用や「美しいちばの森林づくり」の活動、生活環境を守るための条例「林地開発許可制度施行要綱」についての取り組み等)が話題提供された。
 3番目に、3日目の視察箇所であるわが国最初の大学演習林「東京大学千葉演習林」の概要が演習林長の山田利博教授から説明があった。概要は『山林』No.1505(平成21年10月号)の「東京大学演習林の管理運営とこれからの課題」(広嶋卓也)を参照。
 最後にコーディネータの元演習林教官・鈴木誠さんから「演習林における高齢人工林の経営課題」について話題提供が行われた。南房総清澄地方で最古のスギ植栽年は1485年である。これは台風被害木等からの推定で、この他にも推定植栽年が1563年、1565年、1616年等といった事例もある。演習林内の古い人工林は演習林創設以前の1835年、1853年、1859年植栽の林分で小班として保全されている。人工林は中腹から沢にかけてスギが、尾根付近にヒノキが植栽され、小班としては混交林となっている。齢級構成は人工林面積824haのうち80年以上が37%、100年生以上が12%を占めるなど高齢級林分が多い。立木処分での立木価格の変動の様子が1959年以降現在までについて示されましたが、1990年以降、価格が下降の一途をたどっていること、このことがm3当たりの立木価格と60kgの米価との比較でも示されていて、それによると1959~1974年ではほぼ同額、1975~1996年では立木が高く、1997~2002年で同額となり、それ以降は立木が下落傾向にあり、最近は6,000円/m3、米価16,000円/60kgの状況であることが示され、面白い視点だと感心しました。最後に、高齢人工林の経営課題として、伐採・搬出技術の向上と業者の育成や、林道・作業道の整備・開設(現状の路網密度11m/ha)の必要性、奥地林資源のヘリ集材の検討と造林地鹿害対策として間伐主体の経営の推進を挙げ、話を締めくくりました。
 提供された各話題に対して熱心な質疑応答がありましたが割愛します。この後、話題提供者を交えての懇親会へ移り、盛況の内に二日目が終わりました。

報告(6)につづく)

平成22年1月 大貫仁人