新年のご挨拶

2014年1月11日
箕輪 光博

 明けましておめでとうございます。旧年は大変お世話になりました。本年も、ご支援・ご厚誼のほど、よろしくお願いいたします。
 1月6日の朝、田中副会長、工藤常務の3人で、総裁桂宮邸に年賀の挨拶に行って参りました。今年も、田中宮務官を前にしての記帳に、3人とも緊張のしっぱなしでした。後ろにどこかのお坊さん方が並んでおられたので、さぞかし私たちは引き立て役に一役買ったのではないかと想像しています。それはともかくとして、宮様の一日も早いご回復をお祈り申し上げます。 
 さて、旧年の後半は、日々の経常事業に加えて、中国出雲地方への研修旅行の実施、恒例の林業経営推奨行事、理事会の開催、内閣府による公益法人への立ち入り検査など、気の抜けない仕事がいくつかありましたが、職員の協働の精神と、会員、理事の方々の協力を得て無事乗り切ることができました。特に、立ち入り検査は、2010年10月、公益社団法人に認定されて以来の初めてのことなので職員一同の緊張は隠せませんでしたが、田中副会長・工藤常務のバランスのとれたリーダーシップの下に、それぞれの職務分掌にしたがって的確に対応することができました。これは、日頃の研鑽の賜と自負しているところです。これを契機に、四つの公益事業のメリハリの効いた運営に取り組み、より開かれた山林会を目指して内外に情報を発信していくつもりです。
 以上のように、工藤常務が就任されてから約半年、職員、理事、各種委員会のご協力を得て事業を進めてきました。この間に、それまで約6年半にわたって経理を担当していただいた中野参与が退任されました。中野参与には、本務の経理の仕事に加えて、機関誌『山林』のPDF化(電子情報化)という大きな仕事もしていただきました。また、氏の仕事に向き合う真摯な姿勢は学ぶべきところが多々ありました。代わって、経理担当の板垣参与が来られました。氏の林野庁での豊富な現場体験・管理体験が、本会の仕事全般に生きることを期待しております。その他に、先のメッセージで言及しましたように、旧年は、茂田常務の退任、小林主事の新任などもあり、山林会にとって、「更新・衣替え」の年でした。 本年は、それを受けて、新たな気持ちで運営に取り組む所存ですので会員諸及び読者諸兄、関係者の方々のご厚誼のほどよろしくお願いいたします。
 ところで、本年は甲午(きのえうま)です。陰陽五行説では、十干の甲は木の陽、十二支の午は火の陽とされ、甲午はエネルギーに充ち満ちた年であるようです。ちなみに、過去2回の甲午の年を振り返ってみますと、まず1894年の甲午は、明治の近代化の基盤がほぼ整い、日本が富国強兵の道を歩み始めた日清戦争の年でした。当時は、林業・林政界も、森林法の制定や国有林の特別経営事業開始の前夜にあたっており、林業・林政の近代化への道を歩み始めた時期です。さらに、次の甲午:1954年は、戦後の復興が一段落し、わが国が勇躍高度経済成長社会へと一歩踏み出した頃でした。林業・林政界も、戦後の復興造林が終わり、洞爺丸台風による未曾有の森林大災害を契機に、国有林の近代化政策・生産力増強政策を打ち出していく大転換期にあたっています。 
 このようにみていくと、今回の甲午も、大転換の時期にあたっているのではないかと考えるのは私1人だけではないでしょう。実際、数年前のリーマンショック、東日本大震災の発生、頻繁に起こる自然大災害、そして昨年から動き始めたアベノミクス、これらの平成維新後の大きな動きは、明治維新後の富国強兵政策、戦後の度重なる災害、経済成長政策を連想させる何かを感じさせます。林業・林政界も然りで、数年前の森林・林業再生プラン政策、国有林の一般会計への回帰、森林経営計画制度の実施など、大転換期を迎えています。ここで最も大切なことは、時代の変容を的確に捉えると共に、もう一度、「林業は100年の計」という長期的視点に立って、我々はどのような地域社会づくり、森林づくりを目指すべきなのか、どのような「林業の形」の実現を志向すべきなのかを、産業間、都市・農山村間の利害を超えて考究することではないでしょうか。
 以上のような時代の変容の中で、当大日本山林会は、1882年以来、132年目の正月を迎えました。ちなみに、山林会の生まれた年は壬午(みずのえうま)で、何の因果か(!)、その60年後の壬午(1942年)に私は生を受けております。森林施業の「分期」という考え方に倣って、12年を1分期とすると、132年は11分期にあたり、次の12年でめでたく12分期を全うすることになります。その意味で、真ん中にオリンピックを挟んだこれからの12年は大切な期間です。この未来に向かって、公益法人として、機関誌『山林』の発行を軸に、各種調査研究、山林事業、文献センターの管理の4つの公益事業の運営に全力で取り組み、それを通して、会員及び森林所有者の方々が元気になるような方策を模索していく所存ですので、一層の御支援をお願い致します。

2014年1月 箕輪 光博