「林業経営『創意工夫』表彰行事」のスタートにあたり

2010年7月10日
大貫 仁人

Ⅰ.平成22年度事業のこと

 平成22年度大日本山林会通常総会及び代議員会が5月末に開催されました。この総会で承認された事業計画と予算のもとで、平成22年度の事業が本格的に動き始めています。
 ところで、当会の「新公益法人制度」への対応については、「会長からのメッセージ」でお知らせしましたが、「新公益社団法人」への移行申請を平成21年12月15日付で公益認定等委員会宛に行ったとろこであり、現在は未だ認定処分待ちの状況です。そのため、今年度の事業は、これまでの公益法人としての事業と新公益法人認定後の事業に分けて実行していくことになります。総会で承認して頂いた平成22年度事業計画と予算については「新公益法人」として認定された場合を想定した事業計画となっていますので、年度途中での切り替えについては、さほど面倒なことにはならないものと想定しているところです。具体的には、現行の定款の11の事業は、新定款でもそのまま公益目的事業として引き継がれていますが、それぞれの事業の関連性を踏まえ、大括りして普及啓発事業(公1)、調査研究事業(公2)、山林事業(公3)、林業文献センター事業(公4)の4つの公益目的事業として実行することにしています。

Ⅱ.林業経営『創意工夫』表彰行事のスタート

 公1には7つの事業が括られていますが、その中の「発明・改良の奨励」事業については、事業の成果の「見える化」を図るため、新たに「林業経営『創意工夫』表彰行事」をスタートさせることに致しました。この行事は、森林・林業・林産業全般に係わる技術的発明、改良、創意工夫を対象とするもので、幅広い関係者の皆さんからの協力無しには十分に行えないことから、この行事の目的・趣旨、内容、申請手続き等についてここでお知らせして、皆さんのご協力をお願いすることに致しました。よろしくお願いします。

林業経営『創意工夫』表彰行事

  1. 趣旨:林業経営の現場で役立つ技術的な発明、改良、創意工夫事案を発掘し顕彰すると共に、その成果を幅広く普及する。
  2. 参加資格(表彰の対象者):林業経営の現場で役立つ技術的な発明、改良、創意工夫事案を考案した者またはグループ
  3. 参加の方法:参加者は所定の参加申し込み書(申請書、推薦書)を大日本山林会に提出する(考案した者または推薦者から)。
  4. 審査および表彰:外部有識者からなる審査委員会を設置し、審査委員会で書類及び現地審査を行う。優秀と認めるものを毎年3点以内に絞って表彰する。
  5. 普及奨励:表彰された事案については、月刊誌「山林」等を通じて、幅広く宣伝普及する。
  6. スケジュール:募集(9月~12月)、審査(1月~3月)、受賞者の選定(3月中旬)、表彰(5月下旬、於大日本山林会通常総会)

 以上について、実施要領や審査要領を定めて実施するものですが、申請書の様式等は、大日本山林会「ホームページ」にも載せておく予定です。
 政府は、「森林・林業再生プラン」の具体的な施策の方向として「森林・林業の再生に向けた改革の姿」(中間取りまとめ)を示しました。わが国の森林資源は利用期に達しつつあるとし、木材利用の拡大を通して10年間で国産材自給率50%を目指すことが重要な成長戦略であるとしています。わが国人工林資源は「成熟度」という概念でみると、控えめに見ても平均伐期齢80年で保続生産が可能な状態にまで統計的には成熟しており(『森林経営の新たな展開』、当会発行、2010)、全国各地域で持続可能な林業を展開できる基盤が整っているといえます。この資源をわが国の「森林・林業再生」のために有効に活用していくことが現在の我々に求められている大きな課題です。この有効活用には、森林の持つ公益的機能の維持・発揮に配慮しつつ、”保続生産”を確保していくことが絶対の条件です。林業経営の現場で伐採→植林→保育が経済的にもモチベーションをもてる形で確実に行われる環境づくりが急務となっています。このようなことに役立つための現場の技術、システム、知見、ノウハウについてのレベルアップを目指すことがこの事業の狙いです。
 例えば、施業の意思決定支援システム、低コスト作業システム、路網作設、境界明確化、森林情報整備、低コスト施業、生物多様性保全、森林の取り扱い方法、目指すべき森林の姿、鹿などの獣害対策、優良な苗木の供給、効率的で儲かる林業、里山管理、カーボンクレジット問題、伐木造材等々いろいろあるでしょう。これらの優れた技術、システム、知見、ノウハウについて全国的に公募していきます。

平成22年7月 大貫仁人